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本願一乗とは(5)「すべての往生を願う人びとに」

本願一乗とは(4) 「一乗の機教」の続きです。

『行文類』では、誓願一仏乗において、法(念仏)が比較を超えた唯一絶対の教法であり、それを与えられた機(信心)も比較を絶した絶対不二の機であることを明らかにされた後、「敬つて一切往生人等にまうさく」(謹んですべての往生を願う人びとに申し上げます)と仰り、これまで説き明かしてきた弘誓一仏乗を28の譬えと10句をもって讃嘆されてます。本文と現代語訳を交互に紹介します。現代語訳は『聖典セミナー 教行信証[教行の巻]』(梯實圓著 本願寺出版)352-354頁からの引用です。

敬つて一切往生人等にまうさく、弘誓一乗海は、無碍無辺最勝深妙不可説不可称不可思議の至徳を成就したまへり。なにをもつてのゆゑに。誓願不可思議なるがゆゑに。
(謹んですべての往生を願う人びとに申し上げます。弘誓一乗海は、何ものにもさまたげられることなく人びとを救う法であり、きわも辺もなく、最も勝れており、奥深くて、説き尽くすことも、たたえ尽くすことも、思いはかることもできない最高の徳が成就されています。なぜならば、不可思議なる誓願によって成就されたものであるからです。)

悲願はたとへば太虚空のごとし、もろもろの妙功徳広無辺なるがゆゑに。
(その誓願の不可思議なるありさまを誓えで表せば、悲願は大空のようです、広大無辺のさまざまな素晴らしい功徳を包んでいるからです。)
なほ大車のごとし、あまねくよくもろもろの凡聖を運載するがゆゑに。
(ちょうど大車のようです、凡夫であれ聖者であれ、あらゆる人を乗せて、さとりの世界へ運んで行くからです。)
なほ妙蓮華のごとし、一切世間の法に染せられざるがゆゑに。
(ちょうど美しい蓮華のようです、一切の世俗の事柄に汚染されることがないからです。)
善見薬王のごとし、よく一切煩悩の病を破するがゆゑに。
(善見薬王樹のようです、すべての煩悩の病を見抜いて退治するからです。)
なほ利剣のごとし、よく一切驕慢の鎧を断つがゆゑに。
(ちょうど利剣のようです、人びとが纏っている一切の僑慢の鎧を断ち切るからです。)
勇将幢のごとし、よく一切のもろもろの魔軍を伏するがゆゑに。
(勇将帝釈天の幡(軍旗)のようです、一切の悪魔の軍勢を降伏させるからです。)
なほ利鋸のごとし、よく一切無明の樹を截るがゆゑに。
(ちょうど鋭い鋸のようなものです、よく一切の無明の樹を切り倒すからです。)
なほ利斧のごとし、よく一切諸苦の枝を伐るがゆゑに。
(ちょうどよく切れる斧のようです、よく一切の苦しみの枝を伐るからです。)
善知識のごとし、一切生死の縛を解くがゆゑに。
(善知識のようです、よく人びとを生死に縛りつけている迷妄の絆から解放してくれるからです。)
なほ導師のごとし、よく凡夫出要の道を知らしむるがゆゑに。
(ちょうど導師のようです、よく凡夫に生死を超える肝要な道を知らせるからです。)
なほ涌泉のごとし、智慧の水を出して窮尽することなきがゆゑに。
(ちょうど涌き出る泉のようです、はてしなく智慧の水を出し続けるからです。)
なほ蓮華のごとし、一切のもろもろの罪垢に染せられざるがゆゑに。
(ちょうど泥沼に咲く蓮華のようです、一切の罪の垢に汚染せられることがないからです。)
なほ疾風のごとし、よく一切諸障の霧を散ずるがゆゑに。
(ちょうど疾風のようです、一切衆生の罪障の霧を吹き払うからです。)
なほ好蜜のごとし、一切功徳の味はひを円満せるがゆゑに。
(ちょうど美味しい蜜のようです、一切の功徳の味わいが円かに具わっているからです。)
なほ正道のごとし、もろもろの群生をして智城に入らしむるがゆゑに。
(ちょうど正しい道のようです、あらゆる人びとをさとりの智慧の領域に入れしめるからです。)
なほ磁石のごとし、本願の因を吸ふがゆゑに。
(ちょうど磁石のようです、本願に誓われたとおりに信心の行者を吸いつけていくからです。)
閻浮檀金のごとし、一切有為の善を映奪するがゆゑに。
(また閻浮檀金(純度の高い金)のようです、常住無為の善である本願の名号の光は、煩悩に汚れた世間の無常有為の善の光を奪い取ってしまうからです。)
なほ伏蔵のごとし、よく一切諸仏の法を摂するがゆゑに。
(ちょうど伏蔵(地下の宝庫)のようです、よく一切の諸仏の法を摂めているからです。)
なほ大地のごとし、三世十方一切如来出生するがゆゑに。
(ちょうど大地のようです、過去・現在・未来の三世にわたって、十方に出現されるすべての仏陀たちが、そこから出生されるからです。)
日輪の光のごとし、一切凡愚の痴闇を破して信楽を出生するがゆゑに。
(太陽の光のようです、一切の凡夫の愚痴の闇を破って、信心を起こさせるからです。)
なほ君王のごとし、一切上乗人に勝出せるがゆゑに。
(ちょうど大王のようです、大王が諸侯に超え勝れているように、一切の諸仏(上乗人)に超え勝れているからです。)
なほ厳父のごとし、一切もろもろの凡聖を訓導するがゆゑに。
(ちょうど厳しい父のようです、一切の凡夫や聖者を教え導くからです。)
なほ悲母のごとし、一切凡聖の報土真実の因を長生するがゆゑに。
(ちょうど慈愛に満ちた母のようです、一切の凡夫や聖者が報土に往生するまことの因である信心をはぐくみ育てるからです。)
なほ乳母のごとし、一切善悪の往生人を養育し守護したまふがゆゑに。
(ちょうど乳母のようです、善人であれ悪人であれ、往生しょうと願うすべての人を守り育てるからです。)
なほ大地のごとし、よく一切の往生を持つがゆゑに。
(ちょうど大地のようです、すべての往生人をしっかりと支えているからです。)
なほ大水のごとし、よく一切煩悩の垢を滌ぐがゆゑに。
(ちょうど洪水のようです、よく一切の煩悩の垢を洗い流してしまうからです。)
なほ大火のごとし、よく一切諸見の薪を焼くがゆゑに。
(ちょうど大火のようです、火が薪を焼くように、あらゆる邪見や偏見などの誤った見解を焼き尽くすからです。)
なほ大風のごとし、あまねく世間に行ぜしめて碍ふるところなきがゆゑに。
(ちょうど大風のようです、あまねく世界に行きわたって、何ものにも妨げられないからです。)

(このような誓願一仏乗は、)

よく三有繋縛の城を出して、
(迷いの境界(三界)に繋ぎとめられている衆生をよく救い出し、)
よく二十五有の門を閉づ。
(ふたたび迷界へ転落しないように、すべての迷いの境界(二十五有)への門を閉じ、)
よく真実報土を得しめ、
(よく真実報土へ往生させ、)
よく邪正の道路を弁ず。
(邪なる路と正しい道とをはっきりとわきまえさせ、)
よく愚痴海を竭かして、
(本願を疑う疑惑の海を干上がらせて、)
よく願海に流入せしむ。
(信心を獲て本願の海に流れ入れしめられます。)
一切智船に乗ぜしめて、
(浄土に至れば、完全なさとりの智慧をきわめて、大悲をおこし、さとりの船に乗ぜしめて、)
もろもろの群生海に浮ぶ。
(迷える人びとを救うために衆生海に浮かび、)
福智蔵を円満し、
(福智蔵と呼ばれる『無量寿経』を説いて、完全な真実を知らせます。)
方便蔵を開顕せしむ。
(しかし、ただちに真実を受けいれられないものには、方便蔵と呼ばれる『観無量寿経』や『阿弥陀経』を説いて、未熟な人を導くはたらきをさせていきます。)

まことに奉持すべし、ことに頂戴すべきなり。
(まことに信奉すべき教えであり、ことに頂戴しなければならない法であります。)


最後の10句のうち、はじめの6句は往相回向の徳をたたえ、あとの4句は還相回向の徳をたたえたものです。

このようなお言葉を拝読すると、親鸞聖人は本願一乗海一つを勧めていかれたことがよく分かると思いますが、いかがでしょうか?


最近、何回か引用している『化身土文類』のお言葉

安養浄刹にして入聖証果するを浄土門と名づく、易行道といへり。この門のなかについて、横出・横超、仮・真、漸・頓、助正・雑行、雑修・専修あるなり。正とは五種の正行なり。助とは名号を除きて以外の五種これなり。雑行とは、正助を除きて以外をことごとく雑行と名づく。これすなはち横出・漸教、定散・三福、三輩・九品、自力仮門なり。
横超とは、本願を憶念して自力の心を離る、これを横超他力と名づくるなり。これすなはち専のなかの専、頓のなかの頓、真のなかの真、乗のなかの一乗なり。これすなはち真宗なり。すでに真実行のなかに顕しをはんぬ。


でも、第18願の教法(横超)は、専修の中の専修であり、頓教の中の頓教であり、真実の中の真実であり、一乗の中の真の一乗であることが教えられています。

今まで、本願一乗ということについて、
本願一乗とは(1)「一乗海の釈」
本願一乗とは(2)
本願一乗とは(3)
本願一乗とは(4) 「一乗の機教」
と、4回(この記事を合わせて5回)にわたって書いてきました。

親鸞聖人が誓願一仏乗(阿弥陀仏の誓願によって成就された南無阿弥陀仏は、善悪・賢愚を簡ばず生きとし生けるすべてのものを平等に成仏せしめる絶対唯一の教法である)と教えられた御心をよく知れば、高森会長の説く「三願転入の教え」なるものは親鸞聖人の教えでも何でもないことがわかるでしょう。
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名号は 如来の御名と 思ひしに わが往生の すがたなりけり
(蓮如上人)

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